悪人

ura-shan2010-01-12

文庫版になるのを待ちわびていた長崎出身の吉田修一著「悪人」を連休中に一気読み。抜群に面白い。そして紛れもなく傑作。登場人物の過去・背景、それによって浮かび上がる人物像をこれ程までに緻密に描いた小説は近年読んだことがない。自分自身が長崎出身で、現場となった三瀬峠を何度となく自家用車で通っているせいもあるかもしれないが、物語の風景がありありと想像でき、登場人物があたかも自分の知人でもあるかのような何というリアリティー感。それでいて無駄な部分が感じられず、間延びせず最後まで一気に読ませてくれる。文庫本の帯に結構踏み込んだあらましが書いてあるのが残念だが、後半は展開が読めず心底ハラハラドキドキ。読み終えた後も「悪人」という表題の意味を考える楽しさまで付属されていて、誰にでもお勧めできる素晴らしい作品です。